朝なけに
リビングのテーブルの上には、吸殻のある灰皿だけじゃなくコンビニで買った惣菜が沢山並び、中さんは缶ビールを飲んでいたみたい。


「腹減ってるなら、食えよ?」


中さんはソファーに腰を下ろし、飲みかけのビールの缶を手にしている。


「あ、はい。
お腹は空いてないですが、その唐揚げが美味しそうなので食べたいです」


「食え食え」


私は中さんの隣に腰を下ろす。
べったりとはくっついていないが、離れてもいない距離。
それは左側で、空いている中さんの左手が私の肩を抱き寄せて来る。


やっぱり、何度触れられてもドキドキとする。


「千里が、昨日お前が落ち込んでた、ってわざわざ電話して来たんだが。
あれだな?聞いてた感じじゃねぇな?」


中さんは、少し私の顔を覗き込むように見て来る。


「え?」


今の私の顔は、落ち込む所かきっとにやけている。


「昨日は悪かった。急に断って」


「いえ、それは気にしないで下さい」


せっかく昨日の事はもう考えないようにしていたのに。
そう言われたら、嫌でも考えてしまう。
そして、今夜誘ってくれたのは、千里さんから私のその様子を聞いて気を遣ってくれたのかもしれない。


「千里から聞いた。
お前に色々と話したって」


「あの、ごめんなさい!
そうやって探るような事して!」


「今さらかよ」


焦る私とは違い、中さんは笑っている。
この人に近付きたくて、照さんや千里さんから色々と聞き出して、今に至っている。
だから、本当に今さらなのだと思うけど。


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