朝なけに
「…分かった。後で撮れよ。
だから、そんなに落ち込むなよ」


中さんには、私が落ち込んでいるように見えたのか?
どうしたら写真撮らせてくれるのか、前向きに作戦を考えてただけなのに。


「ありがとうございます」


まあ、撮らせてくれるならいいか。
嬉しい、ヤッター。


「お前そうやって、いつも笑ってろ。
お前の笑ってる顔けっこう好きだから」


その言葉に、凄くドキドキしてしまう。
顔も赤くなってそう。


「じゃあ、中さんの前ではずっと笑ってますね!」


ニコッ、と満面の笑みで中さんの顔を見る。


「ああ。けど、お前の笑ってる顔にイラッとする時もあるんだよな。
今がそう」


「え、じゃあどうすればいいんですか?」


そう困っている私とは違い、中さんはアハハと楽しそうに笑っている。
その中さんの笑ってる顔にドキドキもそうだけど、胸がキュンキュンとして。
そうか。こんな感じに自然に笑えばいいのか、と思った。


電車が大きく揺れて、ふらふらとする私の肩を支えるように腕を回された。


「お前吊革掴まないなら、俺に掴まってろ」


そう言われ、じゃあ、と中さんの腕に掴まるように両手で掴む。


「次のM駅で降りる。
お前の言う都会かどうかは分からないが」


「はい」


もうすぐ降りるのか。
わりと電車にこうやって乗るのも良かったのだけどな。


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