朝なけに
「ねぇ、葵衣ちゃんだっけ?」


私が名残惜しそうに出入口の扉を見ていると、照さんが訊いて来る。


「はい、葵衣です。
小山葵衣(こやまあおい)。
こっちが友達の前田萌香」


「そう。葵衣ちゃん。
俺は同本照。
で、こっちの厳ついのが和田千里」


そうやって何故か自己紹介し合う。


どうもとてるさんに、わだせんりさんか。


「あの、中さんはなんという名字なのですか?」


この人達よりも、そちらが気になる。


「中は…加賀見中」


照さんのその言葉を頭の中で反芻する。

かがみあたる…。
名前までタイプかもしれない。


「けど、ガチで忠告するけど中は辞めておきな」


「なんでですか?」


照さんにそう前のめりで訊いてしまうが、そうか、と気付いた。


「やはり中さん彼女とか居ますよね?」


「いや」


「え、なら、いいじゃないですか…あ、もしかして結婚」


「結婚も中はしてないよ。
なんて言えばいいかな、俺達と君達は住む世界が違うんだよね」


住む世界が、違う…。


「それは、なんとなく分かります。
何かのヤバイ組織の人達なんだろうなって」


先程、うちでは詐欺は禁止しているとか中さんが言っていたが、
なんとなく不良集団みたいな雰囲気がこの人達にはある。


といっても、中さんも照さんも千里さんも、不良と言われる程若くはなさそうだけど。


「…半グレ」


萌香の発したその言葉に、ピンと来た。
最近、よく聞かれるようになったその言葉。


けど、実際に半グレの人達に会ったことなんてなくて、
もしかしたら、この人達がそうなのかな?って感じで。


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