朝なけに
その後は、同じビルに色々なお店が入っているので、下りるついでに色々と見て行く。


「あ、俺、ちょっと服見たい」


中さんは、目当てのメンズブランドの店を見てそう言った。



「私は中さんが服見てる所見たいです!」


私がそう言うと、中さんはそのショップへと入って行く。
私も名前くらいは知っているブランド。
今日の服装もそうだけど、中さんはこういったシンプルなのが好みなんだな?と、店内を見渡す。


今日のお返しに、中さんに何かプレゼントをしようと目の前のTシャツを手に取り値札を見るが、
1万円を超えている。


プレゼントは出来そうにないな、と、それを棚に戻す。



「お前、それが気に入ったのか?」


少し離れた距離から私の様子を見ていたのか、中さんはこちらに近付いて来る。


「いや、そういうわけでは…」


「メンズだけど、Sサイズにしたらお前でも着られるだろ?
買ってやるよ」


中さんはそのTシャツを手にする。



「いや、そうじゃなくてですね。
私がこのTシャツを中さんにプレゼントしたいな、と思ったのですが、
今の私には買えそうにない値段で…」


それを聞いた中さんは、そのTシャツをじっと見ている。



「悪くないな。
俺が自分でこれ買う」


「え、あの…」


「別に誕生日とかじゃないから、プレゼントはいらない。
今日はこうやってお前が俺に服を選んでくれたって事でいいだろ?」


いいだろ?と訊かれれば、いいと思う。
私が中さんの買う服を選ぶなんて、嬉しい限りだし。


「夏服、あと何着かお前が選べ」


「あ、はい」


嬉しいけど、それは責任重大。


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