朝なけに
そのアクセサリーショップは、タイミングが良かったのか店内にお客さんは私達しかいない。
ガラスのショーケースを見ると指輪が目に付くけど、流石にそれはダメだろうと分かる。
指輪はダメだけど、同じように肌身離さず身に付けていられる物がいいとは思う。
アクセサリーなら、どれもそれが叶う。


「中さんが選んで下さい」


厚かましく、そうお願いしてしまう。


「俺が?お前の趣味なんか、分かんねぇし」


「中さんの趣味で構いません」


むしろ、中さんの趣味がいい。


「すいません。この辺りのネックレスショーケースから出して見せてくれませんか?」


中さんは近くに居た女性店員さんに、そう告げている。


「ネックレス…」


「ああ。お前にまだ首輪付けてなかったから。
犬は首輪が必要だろ?」


その中さんの言葉に、女性店員さんはギョッとしていたけど。
私はそれが中さんの冗談というか、以前、私は犬や猫みたいと言われたので、その流れでの発言なのだと分かる。



女性店員さんは私達に見せるように、取り出したネックレス数点を並べてくれる。
中さんがこの辺りと言った辺りのネックレスは、シンプルなデザインが多い。


「これがいいな」


中さんが選んだそれは、星のチャームに数点小さな赤い宝石のようなものが埋まっている。


「はい。素敵です」


本心からそう思う。
その星のネックレスの値札をチラリと見ると、税抜き11万5千円。
いや、流石にそれは高過ぎる。


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