朝なけに
「じゃあ、これにするか」
 

「待って下さい!こんなに高価なものは貰えないです」


「べつにこれくらいなら、構わない」


「私が構うんです。
こんな高いものプレゼントされるのなんて、落ち着かないです」


まだ付き合っているならともかく。
私は中さんの五番目の女で…。
なら、五番目の女らしい値段じゃないといけない。


「なら、それに慣れろ。
お前の価値観を否定しねぇけど、俺と居るって事はこういう事だ」


こういう事…。
価値観の違いってやつなのだろうか。
なら、歩み寄らないといけないのかな?
これが中さんが本気じゃない女性へのプレゼントの金額なのだと。


困ったように女性店員さんは私達を見ていて、これ以上私が拒否したら、中さんに恥をかかせてしまう。


「ありがとうございます。
もしこの先中さんと付き合えたら、もう一桁多い値段の指輪をプレゼントしてくださいね」


そう言うと、中さんは一瞬キョトンとしていたが、口角を上げる。


「ああ。分かった」


そう笑っている中さんを見ていて思うが。
意外と中さんは尽くされるよりも、尽くす側のタイプなのだろうな。
俺様っぽいけど、本質は逆で。


私にこうやってプレゼントしながら、貰う私と同じくらい中さんも嬉しそう。




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