朝なけに
その後、ビルを出て少し歩いていると、中さんは立ち止まった。
「なんか食うか?」
「そうですね」
正直お腹は全く空いてないが、他に行く所が思い浮かばない。
都会の街をブラブラと歩くだけでも楽しいのだけど、
中さんは大きな紙袋を持っているし身軽じゃないから休憩がてらどこかの店に入るのも悪くない。
「食いたいものあるか?」
そう訊かれるが、胃の中にまだ昼間のピザが残っているのを感じ、全く浮かばない。
「お前が酒飲めりゃあ、居酒屋行くんだけどな」
「あ、居酒屋でいいですよ。
私はジュース飲むので」
「いや。俺だけ飲んでってのも…。
あ、お前、ラーメン好きか?」
「ラーメン好きですけど」
「じゃあ決まりだな」
え、決まり?
中さんに凄く旨いラーメン屋があると連れられて、そこへ行く。
わりと近いと中さんは言ったが、なんだかんだ30分近く歩いた。
ただ歩いただけではなく、路面店を外から見ながらだったので、けっこう楽しかった。
歩いてる途中も、中さんから貰ったネックレスを時々手で撫でるように触る。
すぐに着けたくて、ラッピングはネックレスのケースだけにして貰った。
そして、もう片方の手は中さんと繋いだ。