2年で離婚予定の妻ですが、旦那様が永久溺愛で逃がしてくれません
斗真さんの車は広い庭の脇の駐車スペースに停めてあった。

ブラックマイカのセダンは彼のクールな雰囲気にぴったりだ。

フロントグリルに有名な海外メーカーのエンブレムがついていて、普通の自動車よりも車体が大きい。

車に詳しくはないけど、3ナンバーっていわゆるラグジュアリークラスっていうものじゃなかったかな。

本宮ホールディングスは押しも押されもせぬ大企業だ。その御曹司なんだから、きっとかなり高級な車に違いない。


広くゆったりした車内に乗り込み、車を走らせる斗真さんの横顔をちらりと盗み見る。

斗真さんが運転する車に乗るのは初めてだし、ましてや助手席だなんて。

嬉しいけどふたりきりになるとは思ってもいなかったから、もっと話題を考えておけばよかった。

いや、そもそも昨夜まで斗真さんに会えることすら知らなかった私が、そんなことまで考える余裕があるはずもない。

斗真さんは私の心情に気づく様子はなく、これからのことを淡々と説明する。

『内覧』というのは、新居の内覧のことらしい。

うん、なんだかそんな気はしていた。というかそれ以外に考えられないけど。

斗真さんは五月から正式に副社長に就任することになっており、その前に入籍と引っ越しをするのだという。

今は二月末。

つまり、遅くとも二ヶ月後にはもう彼と一緒に暮らしているし、苗字も『本宮』に変わっているということだ。

さっぱり頭が追いつかない。

両親のおかしなサプライズのせいで、私の脳みそは爆発しそうだ。


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