2年で離婚予定の妻ですが、旦那様が永久溺愛で逃がしてくれません
しばらくして、幸斗さんが「お待たせ」と部屋へ戻ってくる。

「ちょっとでも何か食べな。食べられそうなものがあるなら、言ってくれれば持ってこさせるよ」

「……じゃあ、これ少しいただきます」

せっかく用意してもらったんだから、ティースタンドの中からジュレを手に取った。

吐きそうなほど気持ち悪いわけじゃないし、もしも貧血を起こして倒れたりしたら赤ちゃんも危ない。

グレープフルーツ味のジュレはさっぱりしていて、思いのほか美味しく食べられた。

少し食欲が湧いてきて、そのままフルーツののせられたミルクプリンも手に取る。


「あの、さっきの『そういうことか』ってどういう意味だったんですか?」

食べ終えた後に私が問いかけると、幸斗さんはにやりと意地悪な笑みを浮かべた。

「それは兄貴に直接聞いたほうがいいよ」

「え?」

幸斗さんは小さくため息をついて目を伏せる。

「俺さ、最近パートナーとあんまりうまくいってないんだ。長く一緒にいると、素直に気持ちを口にするのって難しくなっていくんだよね。そういうのがどんどんすれ違いに繋がっていくのはわかってるんだけど、つい意地を張ってさ」

幸斗さん、長年お付き合いしている恋人がいたんだ……

こんなに切なげな幸斗さんを見るのは初めてで、相手のことをすごく好きなんだということが伝わってくる。

「だからさ、俺が言うのもなんだけど、瑞穂ちゃんが思ってることをちゃんと兄貴に伝えてみたら?言葉にしないと分からないことってたくさんある。すれ違いが大きくなる前にお互いちゃんと話し合わないと。お腹の赤ちゃんのためにもね」

やさしくにこりと微笑んだ幸斗さんに、張り詰めていた気持ちが楽になっていくのを感じた。

そうだよね。自己完結して逃げてばかりいたら駄目だ。

まずは覚悟を決めて自分の気持ちを伝えよう。

斗真さんの気持ちを聞くのは怖いけど、私の元にきてくれた小さな命を大事に育てていくためにも、話し合いは必要なことなのだ。

「……はい」

< 101 / 123 >

この作品をシェア

pagetop