2年で離婚予定の妻ですが、旦那様が永久溺愛で逃がしてくれません
「春海は大学の同期だ。俺と出会った時、こいつはキックボクシングが趣味でスポーツ刈りの普通の男だった」

「当時はまだカミングアウトできていなかったんです。その後徐々にこうなっていったんですが、就職活動の時に、なかなかこの事情を受け入れてくれる企業はなく、斗真が見かねて私を雇ってくれたんです」

恥ずかしそうに舌を出す春海さんはどう見ても女の人で、スポーツ刈りの男子だったと言われても全く想像がつかない。

いや、でもたった今野太い声を出し、坂本さんを一網打尽にしたのは確かだ。

「……だけど、さっき車の中でっ」

春海さんが男性であったとしても、さっきのは明らかに恋人同士が別れについて揉めている会話だった。

「春海は幸斗のパートナーだ。ここ数ヶ月喧嘩ばかりでうまくいかないというから、相談に乗っていただけだ」

「え?」

「幸斗とは、大学に入って斗真を通じて知り合ったんです。幸斗のご両親にはお付き合いを反対されましたが、斗真が必死で説得してくれて……私と幸斗が日本でパートナーシップの届け出を出し、今一緒にいられるのは斗真のおかげなんです」

春海さんが明るく微笑み、幸斗さんの言葉を思い出した。

『大きな恩がある』

『これで借りは返したぞ』

あれは、こういう事情があったからなんだろうか。

そういえば斗真さんの実家にお邪魔した時も、義父が『お前は子どもを作らないから』って……

少しずつ謎が解けていくけど、まだ腑に落ちない。

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