2年で離婚予定の妻ですが、旦那様が永久溺愛で逃がしてくれません
エレベーターで到着した二十一階に住居は四戸しかなく、建物が四角い造りになっているため全て角部屋だ。

案内された住居は南東側の3LDK。

広い玄関からまっすぐ続く廊下の両脇に、トイレとバスルーム、洋室。

廊下の突き当たりに二十帖のリビングダイニングがあり、そこからさらに二つの部屋へと続くドアがある。

どの部屋もマンションとは思えないじゅうぶんな広さだ。

リビングダイニングの窓は、角部屋ゆえに南からも東からも景色が望めるようになっていて、天井から床までのパノラマウィンドウはとても開放感がある。

窓に近づいて外を覗き込むと、都心の街と東京湾、レインボーブリッジが眼下に見える。

二階建ての家で育った私には見慣れない景色に、クラっと目が回った。

「はー……」

思わず観光客のように感嘆の声を漏らす。

「気に入った?」

「ええ、とても素敵です」

後ろから歩み寄ってきた斗真さんに、振り向いて声を弾ませた。

「夜景はもっときれいでしょうね。時期によってライトアップも変わるでしょうから、とても楽しみ――」

「瑞穂」

私の興奮を遮るように、斗真さんがさっきよりも低い声で呼ぶ。

私を見つめる斗真さんの目はどこか冷たい。

「二年我慢してほしい」

「二年……?」

斗真さんの口から出てきた言葉の意図がさっぱりわからずに戸惑う。

「倉橋商事への後ろ盾は、俺たちが結婚することで成り立つ。だが、融資がおりれば倉橋商事は経営を盛り返せるだろうし、二年あれば両社の間に太いパイプが築ける。そうなれば結婚を解消しても問題ない」

結婚を解消……つまり、離婚っていうこと?

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