2年で離婚予定の妻ですが、旦那様が永久溺愛で逃がしてくれません
すでに彼に買ってもらったものがいくつもあるし、正直レンタルでもじゅうぶんだと思っていたけど、今回は倉橋商事百周年のめでたい場。

『ふさわしいものを新調してやりたい』という斗真さんに甘え、ありがたく買ってもらうことにした。

その時にサロンのスタッフに体のサイズを隅々まで採寸され、『せっかくですから、ウェディングドレスも見てみませんか?』と言われたのだ。

私と斗真さんは、愛菜を妊娠中の安定期に盛大な挙式と披露宴を済ませていた。

だからもうウェディングドレスを着る機会はないけど、キラキラしたドレスがサロンの中にいくつも並んでいたらテンションが上がるのが女心だ。

挙式の時のドレスは自分で選んだものではなくデザイナーが考えてくれたもので、全く私の好みでない派手なものだったため、余計にハンガーにかけられたたくさんのウェディングドレスに見入ってしまった。

『こういう露出が少なくてシンプルな細身のドレス、素敵ですね。お式は済んでいるので、もう縁のないものですけど』

ドレスのひとつを手に取り、私がそう言って苦笑いをすると、スタッフの女性は『さようでございますか』と言いながら何かメモを取っているようだった。

そういうことか、と今さら合点がいく。

きっと斗真さんがあの時買ってくれたドレスは口実であって、採寸とウェディングドレスの好みを知ることが本当の目的だったのだ。

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