2年で離婚予定の妻ですが、旦那様が永久溺愛で逃がしてくれません
本宮斗真(もとみやとうま)さんは、私より五歳年上の三十歳。

アパレルやインテリア雑貨を中心とした事業を展開する『本宮ホールディングス』の御曹司だ。

本宮ホールディングスの前身も老舗の商社だったため、倉橋家とは古くから親交があった。


私が初めて斗真さんに会ったのはまだ幼稚園児の時だ。

他社の周年記念パーティーで出会い、その後何度もイベントの場で顔を合わせる機会があった。

プライベートで互いの家を訪問し合ったことも何度かある。

大学院の修士課程を終えた斗真さんは、卒業と同時にニューヨーク支社への勤務のため渡米していたけど、このたび本社の副社長に就任することになり、六年ぶりに日本に帰ってきたのだ。


「瑞穂、座りなさい」

父に促され、テーブルを挟んで斗真さんの向かいのソファに腰掛ける。

「元気そうだね」

「はい、斗真さんも」

真っ直ぐにかち合った視線に、ドキッとして思わず目を泳がせた。

六年前まではどんなふうに話していたっけ。

そんなことを考えると、意識して何を話せばいいのかわからなくなる。


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