2年で離婚予定の妻ですが、旦那様が永久溺愛で逃がしてくれません
突然のことに私はしばしフリーズ。

斗真さんのそのセクシーな唇に見惚れながら、心臓が早鐘を打ち始める。

唇を離した斗真さんに、動揺を悟られまいと大袈裟にははっと笑う。

「ドジっちゃいました。ダメですね、もっと料理上手にならないと――」

不意に肩を抱き寄せられ、私の体は勢いづいて斗真さんの逞しい胸にくっついた。

「と、斗真さ……?」

早鐘どころじゃない。暴れる心音が斗真さんに伝わってしまわないか心配になる。

「瑞穂、その男は……」

斗真さんの声が耳元の空気を揺らす。

「は、はい?」

彼はそのまま沈黙した。

どうしていいかわからない私は、斗真さんの腕の中で石のように固まったままだ。

少しして彼がゆっくり体を離し、顔を背けた。

「着替えてくる」

茫然とする私をよそに、斗真さんは寝室へと入っていった。

< 57 / 123 >

この作品をシェア

pagetop