2年で離婚予定の妻ですが、旦那様が永久溺愛で逃がしてくれません
「お先に失礼します」

「お疲れさま」

翌日、定時を少し過ぎた時間に仕事を終わらせ、裏口へと向かう。

仕事中何度も昨夜のことを思い出して顔が火照ったけど、マスターや亜矢に心配をかけるわけにはいかず、ずっと気を張っていたため急に肩の力が抜けた気分だ。

指に貼った絆創膏を見つめながら、昨夜のことを回想する。

あんなふうに斗真さんに抱き寄せられたのは初めてだ。

指を舐められたのも当然……

斗真さんの柔らかな唇を思い出し、顔が火を噴く。

あのあといつも通り一緒に夕食を食べ、同じベッドで眠ったけど、心なしかいつもより口数が少なかった気がする。

いや、元々そんなに口数の多い人ではないけど、ちょっと様子が変だったような……

「瑞穂ちゃん」

裏口から出て外の涼しい空気を吸い込んだ時、男性の声に呼び止められて振り返った。

そこにはにこにこしながら歩いてくる坂本さんがいた。

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