2年で離婚予定の妻ですが、旦那様が永久溺愛で逃がしてくれません
寝耳に水の私は、そのあとのんきに談笑に加われるわけがない。

ぼんやりと相槌を打って薄く微笑むくらいしかできないまま三十分ほど過ぎた。

「斗真くん、そろそろ内覧の時間だと言っていたな」

「ええ」

父が思い出したように腕時計に目をやり、斗真さんも同じように時計を見る。

ないらん?

「ほら瑞穂、早く準備してきなさい」

疑問符が頭に飛んでいる私に、母は声を潜める。

「じゅ、準備って」

「その格好で外に出たら風邪をひくわよ」

「外?」

「そう、早く!」

母に急かされるまま自分の部屋に戻り、コートを羽織ってバッグを準備した。

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