2年で離婚予定の妻ですが、旦那様が永久溺愛で逃がしてくれません
「にしても、斗真さんはその件に関して何にも言ってこないわけ?」

「うん、やっぱり斗真さんにとってはたいしたことじゃなかったのかも」

「まー男が誰とでもそういうことできる生き物なのは確かだけどさあ」

経験豊富な亜矢の言葉がグサリと胸を刺す。


斗真さんとは、時々メッセージで連絡を取り合っている。

主に『ちゃんと食べているか?』『困っていることはないか?』といういつもと同じちょっと過保護なメッセージだ。

それに対して私は『大丈夫です。心配しないでください』と答えるだけの当たり障りのないやりとりをしている。


サクッとチーズケーキにフォークを通した亜矢は、そのまま大きな口で頬張る。

「食べないの?」

亜矢は咀嚼しながらくぐもった声で問う。

私は自分がオーダーしたミルフィーユに目を落とした。

当然食べたいと思って頼んだんだけど、いざ目の前にきたらなんとなく胃が受け付けない。

「最近ちょっと胃の調子が悪くて。色々考えすぎてストレスになってるのかな」

空笑いをしたら、亜矢は眉を寄せた。

「お昼の賄いも最近あんまり食べないよね。大丈夫なの?病院は?」

「病院に行くほどじゃないよ。なんとなくってだけ」

亜矢はフォークを持つ手をぴたりと止める。

そしてもぐもぐと口を動かしながら、テーブルのどこか一点を見つめて黙り込んだ。

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