2年で離婚予定の妻ですが、旦那様が永久溺愛で逃がしてくれません
「でも、つわりとか体調が悪くなるのってもっと後なんじゃないの?まだ子供ができてるかどうかなんてわかる時期じゃ……」

「瑞穂はほんと無知なんだから」

呆れ気味にため息をつき、亜矢がカバンから手帳を出した。

亜矢はスマホではなく手帳にまめにスケジュールを書き込んでいるのだ。

カレンダーのページを開き、7月の海の日からペン先でポンポンと数字を叩いていく。

「妊娠って、生理開始日から数えるのよ。海の日前後に生理がきてたんだったら、ハワイに行った日と排卵日が重なってた可能性は高い」

亜矢のペンが、今日、九月一日で止まる。

「できてたら六週目くらいかな。早い人はつわり始まってると思うよ。私のお姉ちゃん、生理が一週間遅れてる時点で仕事するのもしんどそうなくらい気持ち悪がってた」

亜矢のお姉さんは二児の母だ。

婿取りのため実家に同居していて、お姉さんの妊娠中の様子を見ていただろうから、亜矢の知識はあてになる。

まずい。本当に気持ち悪くなってきた。

これはつわりじゃなくて気の持ちようの問題なのかもしれないけど……

「どうしよう……」

斗真さんの隣で素っ裸で目を覚ましたあの時よりも、もっと深刻に途方もない気持ちでいっぱいだ。

「とりあえず、ここ出たら妊娠検査薬買いに行こう。ね?」

亜矢がやさしく諭し、私はこくりとうなづいた。

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