2年で離婚予定の妻ですが、旦那様が永久溺愛で逃がしてくれません
亜矢と一緒にショッピングモールの中のドラッグストアへ行き、妊娠検査薬を買った。

そのままモール内のお手洗いへ。

食い入るように読んだ説明書には、一分ほどで判定が出ると書いてあったけど、一分を待たずしてあっさりと陽性反応の線が浮かび上がった。

そのスティックを見つめながらしばし脳が停止した。

そしてそのあとに出てきたのは、とにかく『どうしよう』という漠然とした感情だ。

お手洗いを出ると、廊下の休憩用ソファで待っていた亜矢が立ち上がった。

「どうだったの?」

「亜矢ぁ…」

言わなくても亜矢には当然結果がわかったようで、情けなく潤む声を出す私の背中を撫でてくれた。

「明日病院に行ってきな。うちのお姉ちゃんが行ってた産婦人科紹介するから」

「うん、ありがと…」

妊娠なんて考えもしなかったからまだ気持ちが追いつかないけど、亜矢がいてくれてよかった。

ひとりだったらこの場で大泣きしていたかもしれない。


一睡もできないまま迎えた翌日。

亜矢がシフトを代わってくれて、紹介してもらった病院へと足を踏み入れた。

診察室に呼ばれ、医師と少し話をしたあと内診台へと案内された。

「おめでとうございます。大きさとしては六週後半くらいですね」

内診台のカーテンの向こうから医師があっさりとそう言い、私は隣に備え付けられたモニターに目をやっる。

モニターに写る白い部分の真ん中にそら豆のような形の黒い丸があり、さらにその中に小さな白い影がポツンと写っている。

医師の話では、これが赤ちゃんなのだという。

「心拍ももう確認できますね。見えますか?」

目をこらすと、確かに白い影の中にピコピコとせわしなく動くものが見えた。

赤ちゃんの、心臓……?

本当に私のお腹の中にあるんだ、小さな命が。

病院に行くまではどうすればいいんだろうと戸惑いばかりだったけど、モニターで見たその姿に感動が沸き上がってきて涙が出そうになった。

それから妊娠初期の注意点について色々説明を受け、次回母子手帳を持ってくるように言われた。


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