2年で離婚予定の妻ですが、旦那様が永久溺愛で逃がしてくれません
「瑞穂ちゃん?」

メタリックブルーのスポーツカーの助手席の窓が開き、聞き覚えのある声がした。

「マンションに帰る途中?送っていこうか?」

運転席から身を乗り出して微笑んだのは、幸斗さんだった。

「幸斗さん……」

「え、どうしたの、瑞穂ちゃん」

じわりと涙が滲み、幸斗さんが焦ったように車から降りてきた。

幸斗さんは私の前にかがんでじっと目を覗き込む。

「今日兄貴が帰ってくるんだよね?なのになんでそんな顔してるの?そういえば、マンションって逆方向だし」

「幸斗さん、私の逃亡に手を貸していただけませんか?」

「逃亡?」

「斗真さんに会いたくないんです。お願いしますっ」

勢いよく頭を下げたら、幸斗さんが肩をポンポンと叩いた。

「落ち着いて。よくわからないけど、ひとまず兄貴と会わないようにすればいいんだな?」

「はい」

涙声で答えると、幸斗さんは助手席のドアを開けてくれた。

「とりあえず、ここから近いウチの傘下のホテルに行こうか。部屋は今から手配する」

「ありがとうございます」

幸斗さんはスーツ姿だ。仕事中だったのかもしれない。

それなのにこんなふうに迷惑をかけて申し訳ない。

だけど、今頼れるのは幸斗さんしかいないのだ。

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