Rain, rain later
 潤くんのことが全然わからない。
 深く知るとか、そういう意味でなく、ただ人間がわからない。
 何を考えてるの?
 何をしてるの?
 なんで傘が女物なの?
 なんではぐらかすの?
 雨がなんなの?
 どうしてあんな目をするの?
 普通じゃ、ないよね?
 私が気づく前から何時間も何時間も。
 なんの理由があって。なんのために。
 何があなたをここに縛るの?

 気になるよ。
 気になってしょうがない。
 だって潤くんが好きだから。せわしなく姿をさがして、そうして見たのがあんな姿で。
 やっと少し近づけたのに。
 ああでも、
 留め具が外れたみたいに気持ちだけ先走ってる。
 ばからしい。
 しんどい。
 ほんとに、ばからしい。
 私らしくない。
 彼にとっては私は何でもない。取るに足らない。
 それだけが事実で、確かなものなのに。
 あとはぜんぶ、私の勝手な先入観で、興味で、思い込みで、形の無い一方通行で、妄想で______
 無駄でしかない。
 探りまわすべきでもない。
 もしかしたら、関わらないほうがいいのかもしれない。それは、私たちに変わりない平穏をくれる。変化を欲するかどうかは、すごく難しい議題で、見てきたイメージを裏切られる可能性をも匿っている。
 へたに踏み込んだりしなければ、知らないふりを貫けば、きっとなにも心配せず望ましい関係を築いていけるのかもしれない。

 でも、中途半端に見てしまった。
 この恋慕の感情は、ずっと育っている。
 垣間見えたモノは引っ張り出したい。
 やっぱり、どうしても、
 知りたい。

 小宇宙を傘に着る、あのきれいな、潤理一(うるい りいち)をたしかにつかみたい。


 ……こんな私は、今までどこに隠れていたんだろう。
< 5 / 10 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop