Rain, rain later
潤理一は泣いているのかもしれない。
雨の日にしか例の奇行をしないことがわかったから。
雨と共鳴しているのかも……
なんてね?いや、さっぱりわからないけれど。
わからないことは本人に聞くしかない。周りでチョロチョロするもんじゃない。
ここは、そう、美人で活発なお姉ちゃんのように。
私のふたつ上のお姉ちゃんはうちの高校のOBで、底抜けに明るい人。遠慮というものを知らなくて言いたいことはずばずば言ってしまう気の強い人で、そのせいでよく女の子とモメていたみたい。
お姉ちゃんは何も言わなかったけど、敵意悪意を向けられる日々はしんどかったに違いない。
けどそんなお姉ちゃんにも彼氏はいて、強くてリア充なお姉ちゃんを私は好きだった。「彼氏がいる」ってことしか聞かされていないから彼のことは全然知らないけど、オトコマエなお姉ちゃんが認める人だ、強くて優しいんだろうな。
さて、そのお姉ちゃんに敬意を示して、ちょっとだけ言動をまねてみようと思う。
自信がないときも、不安なときも、お姉ちゃんを意識することでふしぎと強くいられる。今までだってそうしてきた。苦手だ奥手だなんだと言ってられない。
お姉ちゃんはいつでも強く笑っていたから、弱さなんてないんだと思ってた。
お姉ちゃんならどうするか?
まずは接近。
文字通り接近。
春は雨がよく降る。潤くんの行動パターンが分かればこっちのもの。
「潤くん」
いました、彼は花壇の上に座り込んでいる。今日はタオルがないのか、腰かけることはせずにヤンキー座り。
午後から急に降り始めたからかな。
顔が傘の影にかくれて見えない。
「おす」
私の姿を認めると、軽く手を上げてくれた。
「私友だち待ってるんだ。ちょっとだけ一緒にいてもいい?」
彼はあまり間を置かずに応えた。
「いいよ」
よし。やった。お姉ちゃん効果だ。
お姉ちゃんになったと思えば、なにも恐くなんてない。
「潤くんは、いつもここで何してるの?」
だから、いきなりド直球も平気。
これが、良かったのか悪かったのか。
「_____言ってるじゃん。雨が好きなんだよ」
彼はまた小宇宙に表情を隠した。
その仕草がすごく気になった。
「だから、ここでずっと座ってるの?」
「________なに」
ふっと現れたその目は、
醒めているでも、ましてや細まってもいなくて。
度が過ぎるほど解りやすい、牽制だった。
“それ以上踏み込んでくるな”って。
やらかした。私は焦燥に駆られ、手の内側が湿った。
私は怖くてたまらない。
でも。
“お姉ちゃん”は、そんなこと気にも留めなかった。
「ねえ、どうなの?教えてよ」
私が造り出した完璧なお姉ちゃんは、にいっとなにも考えず笑った。
ゆるやかに弧を描く唇と目もとには、純粋なだけの好奇心以外存在しないのだ。
そうだよね、お姉ちゃん。
雨の日にしか例の奇行をしないことがわかったから。
雨と共鳴しているのかも……
なんてね?いや、さっぱりわからないけれど。
わからないことは本人に聞くしかない。周りでチョロチョロするもんじゃない。
ここは、そう、美人で活発なお姉ちゃんのように。
私のふたつ上のお姉ちゃんはうちの高校のOBで、底抜けに明るい人。遠慮というものを知らなくて言いたいことはずばずば言ってしまう気の強い人で、そのせいでよく女の子とモメていたみたい。
お姉ちゃんは何も言わなかったけど、敵意悪意を向けられる日々はしんどかったに違いない。
けどそんなお姉ちゃんにも彼氏はいて、強くてリア充なお姉ちゃんを私は好きだった。「彼氏がいる」ってことしか聞かされていないから彼のことは全然知らないけど、オトコマエなお姉ちゃんが認める人だ、強くて優しいんだろうな。
さて、そのお姉ちゃんに敬意を示して、ちょっとだけ言動をまねてみようと思う。
自信がないときも、不安なときも、お姉ちゃんを意識することでふしぎと強くいられる。今までだってそうしてきた。苦手だ奥手だなんだと言ってられない。
お姉ちゃんはいつでも強く笑っていたから、弱さなんてないんだと思ってた。
お姉ちゃんならどうするか?
まずは接近。
文字通り接近。
春は雨がよく降る。潤くんの行動パターンが分かればこっちのもの。
「潤くん」
いました、彼は花壇の上に座り込んでいる。今日はタオルがないのか、腰かけることはせずにヤンキー座り。
午後から急に降り始めたからかな。
顔が傘の影にかくれて見えない。
「おす」
私の姿を認めると、軽く手を上げてくれた。
「私友だち待ってるんだ。ちょっとだけ一緒にいてもいい?」
彼はあまり間を置かずに応えた。
「いいよ」
よし。やった。お姉ちゃん効果だ。
お姉ちゃんになったと思えば、なにも恐くなんてない。
「潤くんは、いつもここで何してるの?」
だから、いきなりド直球も平気。
これが、良かったのか悪かったのか。
「_____言ってるじゃん。雨が好きなんだよ」
彼はまた小宇宙に表情を隠した。
その仕草がすごく気になった。
「だから、ここでずっと座ってるの?」
「________なに」
ふっと現れたその目は、
醒めているでも、ましてや細まってもいなくて。
度が過ぎるほど解りやすい、牽制だった。
“それ以上踏み込んでくるな”って。
やらかした。私は焦燥に駆られ、手の内側が湿った。
私は怖くてたまらない。
でも。
“お姉ちゃん”は、そんなこと気にも留めなかった。
「ねえ、どうなの?教えてよ」
私が造り出した完璧なお姉ちゃんは、にいっとなにも考えず笑った。
ゆるやかに弧を描く唇と目もとには、純粋なだけの好奇心以外存在しないのだ。
そうだよね、お姉ちゃん。