Doll
少女たちが去って行った後、フローラの目から涙が零れ落ちる。

「……もう嫌!」

誰も自分の言葉に耳を傾けようとはしない。無視され、物を壊され、時に暴力を振るわれることもある。

その場に泣き崩れるフローラの耳に、楽しげな女子生徒たちの話し声と笑い声が聞こえてくる。フローラは制服の黒いスカートを強く握り締める。ただ、悲しみと悔しさが心の中を渦巻いていた。

もしも自分が魔女と呼ばれる存在ではなかったのならば、こんなにもいじめられることはなかったかもしれない。当たり前のように友達ができ、好きな人の話などをしていたかもしれない。放課後にみんなで買い物に行ったり、休日に遠くへ遊びに行ったりしていたかもしれない。

考えれば考えるほど、ただ惨めになっていく。どれだけ願ってもフローラから魔法は消えないのだ。

「……ヴィルミス」

フローラが呟くと、教室の中に置きっぱなしにしてあったはずのかばんが手元に現れる。物を移動させる魔法だ。
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