Doll
かばんを手に、フローラは家へと帰って行く。その間も、周りからの冷たい視線とヒソヒソと話す声がフローラの心に傷を付けていった。

幸いだったのは、フローラの家が人間の住む住宅街になかったことだ。魔法薬に使う薬草採取ができるようにフローラの家は街外れの森の中にある。木々に囲まれた家は静かで、誰もフローラを傷付けない。

静かな家の中で、読書をするのがフローラの人生の唯一の楽しみだった。物語の中にいる時だけは現実を忘れられる。だが、最近は家に帰るのも少し憂鬱なのだが……。

「ハァ……」

ため息が自然と口から出て行く。幸せが逃げて行くと祖母に言われたものの、「楽しい」と思えない毎日なので仕方がない。

俯きがちで歩いていたフローラだったが、ふと視界の隅にキラキラと星のように輝く光を見つけ、顔をゆっくりと上げる。家がある森まであと少しだ。だが、フローラの目はあるものに釘付けだった。

「可愛い……」
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