Doll
男性のことを魔族たちは人形使いと呼んでいる。元々は人間だった彼は魔法使いになろうとしてして失敗し、人でも魔族でもない存在になってしまったのだと幼い頃から聞かされていた。

「いいかい?人形使いは自分の主人を探しているんだ。自分に命令をくれて、永遠にそばにいてくれる主人をね。あの店に入ったら、お前も人形使いになってしまう。だから絶対に入ってはいけないよ」

祖母の言葉が頭の中に蘇る。幼い頃は得体の知れない存在に恐怖が込み上げ、人形屋がない方の道を通って帰るようにしていた。だが、今日はぼんやりと考え事をしているうちにこちらの道に来てしまったようだ。

「危なかった……」

危うく店の中に入ってしまうところだった。走りながらフローラはフウッと息を吐く。

心の中には恐怖があった。だが、それと同時に恋をした時のような胸の高鳴りがあった。



昼間でもどこか薄暗い森の中をフローラは歩く。珍しい草花が生えている道を歩いて行くと、森の中に家が現れる。三階建ての木造の家だ。
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