Doll
「ただいま」

フローラがドアを開けて言うと、中庭の方から何やら賑やかな声が聞こえてくる。ドアを開けると、そこには十二歳の弟のオーウェンが魔法を使っていた。中庭に雪を降らせ、その雪を見て人間の友達は目を輝かせている。

「オーウェン、すげぇ!雪だ!春なのに雪が降ってる!」

「こんなの、簡単な魔法だよ!」

オーウェンは楽しそうに笑っている。友達と話すその姿を見ていると、フローラの中で怒りが生まれてしまう。同じ魔族、家族であるのにどうしてこんなにも違うのか、と……。

「こら、なんて顔してるの」

唇を噛み締め、拳を握り締めているフローラに、お茶の準備をしていた母が呆れたように言う。

「……人間の前で魔法なんて使っていいの?」

「昔とは違うのよ。魔法使いが人の家に行き来してもいいように、人が魔法使いの家に来てもいいでしょう?」

「そう……」

楽しそうに笑うオーウェンと友達から顔を背けたフローラに、母は言った。
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