意地悪な王子様とのヤキモチ争奪戦
「はぁ……良かった」
ペンギンのぬいぐるみを抱えながら、嬉しそうな顔で副社長室を後にした、颯を思い出しながら、私は、安堵感とここ最近の疲労から、ソファーに身体を預けた。
ポケットで、震えたスマホを覗き込めば、千歳からラインメッセージが届いている。
『美弥見つかって良かったよね、実花子いまどこ?秘書室?』
千歳が、会社で、ラインしてくるのは珍しい。
何か急ぎの要件だろうか。
『颯の部屋。さっきまで一緒にご飯たべてたから、食べたら秘書室戻るわね。急ぎなら内線頂戴』
(これで、よし、と)
あの颯の大事な野良猫が居なくなってから、2週間。口には出さなかったが、私は、身重のあの子が、颯の手を離して、何処かで一人で泣いているのかと思うと、正直、居ても立っても居られない気持ちだった。
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