後宮鳳凰伝 愛が行きつくその先に
迷いの無い声音で言う秀快の(ひとみ)を見た洪武帝は溜息(ためいき)をついた。

「分かった。そこまで真剣ならば娶る事を許可しよう」

「本当ですか!?感謝いたし――」

「ただし!正妃としてではなく、側妃としてだ。余が許容できる範囲はそこまでだ」

有無を言わさなぬ剣幕に、反論しようとした秀快は黙る。

(条件をのまなければ美凰を娶れない。いや、処刑しても構わないとでも言うような目つきだ)

父皇は残酷な方だ、と思いながら承諾した。

「承知いたしました。張氏を王妃、喩氏を良妃、美凰は楊氏と共に静妃として娶る。その他の者たちはおいおい考えます。これでよろしいでしょうか」

「うむ。さすがは我が息子だ」

「お褒めにあずかり恐縮でございます」

(こうべ)()れた秀快の横を通り過ぎ、碽貴妃の元に向かう洪武帝を見送る。

まだ整理しきれない頭を押さえ、美凰の元へ向かう。

使用人でも呼んで居場所を聞こうと思っていたが、美凰は部屋を出てすぐ接している中庭にいた。

桜の木のそばに(たたず)み、花びらを切なそうに眺める美凰。


風と共に舞い、儚く散っていく花びらは、まるで彼女の心情を表しているかのように。
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