後宮鳳凰伝 愛が行きつくその先に
「壮大な夢?」

「寵妃付きの宦官になることに決まってるじゃないですか。賄賂(わいろ)をたっぷりもらって、ばかでかい邸宅と別宅を建てて、外朝の官吏(かんり)どもを(あご)で使う。これぞ全宦官の夢ですよ」

「桼少監、口の利き方には気を付けた方がいいですよ。美凰さまは殿下が見初めた方なんですから」

阿蘭が少し怒ったように言うが、利欲はすっかりやる気をなくしたらしい。

「主上の後宮でも、気に入られて宮女から妃嬪となった御方がいられましたけど、その後どうなったと思います?妃嬪たちから嫉妬され、挙句の果てには他の美姫に寵愛を奪われ、自害なさったんです。皇族の愛ほど信用できないものはありませんよ」

「桼少監、美凰さまの御耳に不吉なお話を入れないでちょうだい」

「あ、俺、義妹のご機嫌を取らないといけないので、それでは失礼しますね~」

「利欲!待ちなさいって……行っちゃった。すみません、美凰さま。利欲とは同期なんですけど、あの通り美女と銀子にしか興味がなくて……」

「惢真が謝る必要はないわ。利欲みたいな個性豊かな者がそばにいる方が案外楽しいものよ」

阿蘭と惢真と苦笑しながら、寝所へと向かう。
寝所に腰掛け、紅蓋頭(こうがいとう)を被り、花婿の訪れを待つ。

紅蓋頭は花嫁の被り物で、花婿が外すものである。




――夜伽の時刻――

「殿下、今宵の夜伽には誰をご指名なさいますか?」

「徐静妃だ」

「恐れながら、殿下。王妃さまは嫁いで来られてから、まだ一度も夜伽をなさっておられません」
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