後宮鳳凰伝 愛が行きつくその先に
「機嫌は直ったかい?」

「ええ、もちろん!」

「良かったよ。さあ、それは閉まって、夫婦の務めを果たそうじゃないか」

宝石のように茶葉を見つめている美凰から、無理矢理に箱を奪って几案(つくえ)に置き、美凰を引き寄せる。

「夫婦の務めって、私と秀快は(めかけ)と王なのだから夫婦じゃありませんよ」

真顔で言う美凰に、面白くて笑ってしまう。

「そこに突っ込まなくても良いだろう?それに、美凰が初めての相手なんだから、夫婦と呼ばせてくれよ」

「初めてではないでしょ。王妃さまや喩良妃さまが先に嫁いでおられるのですから」

「体調がすぐれないふりをして先延ばしにしたんだよ」

君が初めての相手だよ、と愛おしそうに耳元でささやかれ、どきりとする。

「な、なぜ、そのようなことを……?」

「一番、愛しているからだよ。私の最初で最後の相手が君が良いんだ。他の誰でもなく、美凰という最愛の人が良い」

苦しそうに顔をゆがめ、離すまいというように美凰を抱く。

「誰しも幸福(しあわせ)を永遠に手に入れ続けることはできない。だが、君と共に生きる人生なら賭けてみたいと思う」

「私もあなたとの人生に幸福があり続けるか賭けとうございます」

二人が進む道は平穏ではないかもしれない。しかし、一縷(いちる)の望みを捨てぬのも人の良いところであろう。
誰もが、愛しいものや大切なものとの別れがあり、抗うことはできない。だが、その中でも幸福を見出(みいだ)したいと二人は強く願うのであった。

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