後宮鳳凰伝 愛が行きつくその先に
――長紀殿――
長紀殿は燕王府にある王妃が住まう殿舎で、現在は燕王妃となった張 靇月が住んでいる。
「王妃さま」
「殿下はまた体調がすぐれないのかしら?」
侍女に呼ばれ、振り返らずに尋ねる。
「それが……」
「遠慮せずに言いなさい」
言いにくそうに口ごもる侍女に続きを催促する。
「燕王殿下は……徐静妃さまの元へ向かわれました」
「何ですって!?」
「王妃さまを差し置いて静妃の元へ行くとは……殿下は何をお考えなのでしょう」
王妃付きの首席女官である惜良が気遣わし気に言う。
靇月は自分の胸に手を当て、深呼吸をしてから口を開く。
「殿下は徐静妃が好きなのよ。徐氏を王妃にしようとしたほどよ……碽貴妃さまと主上が反対なさって無理だったようだけれど」
「ですが、王妃さまの体面も考えてほしいですわ」
「殿下に不満を言ってはいけないわ。王妃らしく良妻でいれば、殿下も認めてくださるはずよ」
今夜こそ訪れるかもしれないと思って着ていた花嫁衣裳や飾りを侍女たちに外してもらう。
胸がざわめいているのを抑え、夜着に着替える。
長紀殿は燕王府にある王妃が住まう殿舎で、現在は燕王妃となった張 靇月が住んでいる。
「王妃さま」
「殿下はまた体調がすぐれないのかしら?」
侍女に呼ばれ、振り返らずに尋ねる。
「それが……」
「遠慮せずに言いなさい」
言いにくそうに口ごもる侍女に続きを催促する。
「燕王殿下は……徐静妃さまの元へ向かわれました」
「何ですって!?」
「王妃さまを差し置いて静妃の元へ行くとは……殿下は何をお考えなのでしょう」
王妃付きの首席女官である惜良が気遣わし気に言う。
靇月は自分の胸に手を当て、深呼吸をしてから口を開く。
「殿下は徐静妃が好きなのよ。徐氏を王妃にしようとしたほどよ……碽貴妃さまと主上が反対なさって無理だったようだけれど」
「ですが、王妃さまの体面も考えてほしいですわ」
「殿下に不満を言ってはいけないわ。王妃らしく良妻でいれば、殿下も認めてくださるはずよ」
今夜こそ訪れるかもしれないと思って着ていた花嫁衣裳や飾りを侍女たちに外してもらう。
胸がざわめいているのを抑え、夜着に着替える。