後宮鳳凰伝 愛が行きつくその先に
爽やかに微笑みながら言う棣に慌てふためく。

『て、棣さま』

『ああ、よろしくな』




「おい、美凰。聞いてるのか?」

幼いころを思い出していたせいで、話を全く聞いていなかったようだ。

「ごめんなさいね。全然、聞いてなかったわ」

「そんなあけすけに言われると傷つくな」

「で、何の話ですか?」

「はあ……仕方ないな、もう一度言うよ。もうすぐ、俺の秀女選抜があるのは知っているよな?」

秀女選抜とは、成人した皇子が娶る相手をどの位に封じるかを決める、いわば婚礼前の儀式のことである。

棣は一昨年に成人したことによって、親王の位を賜り燕王となった。また、秀快(しゅうかい)という字を持った。
そして、今年の四月、燕王の縁談を進めるために秀女選抜をするように、と主上から勅令が下された。

親王の妻妾には、王妃、良妃(りょうひ)静妃(せいひ)慶妃(けいひ)令衣(れいい)昭訓(しょうくん)御華(ぎょか)という位階がある。正室の王妃は一名のみ、妾室(しょうしつ)の良妃から慶妃までは定員が決まっているが、令衣以下は定員がない。
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