後宮鳳凰伝 愛が行きつくその先に
あまりの横暴な振る舞いに、皮肉を言ってしまう。

「なんて口の利き方なの!?だれか、この女も一緒に外で跪かせなさい!殺しても構わないわ!」

玲雲から引き離され、無理やり跪かせられる。

「喩良妃さま、お願いします!どうか美凰さまだけでもお放しください!」

「阿蘭?お前まだ生きてたの?ちょうどいいわ。こいつも主と同じ目に遭わせなさい」

それでも懇願し続ける阿蘭を止め、喩良妃のほうを睨む。

暑さのせいなのか身体が熱っぽく、気怠(けだる)い。ここ最近、食欲がなくてあまり食べなかったのもあるだろう。

もう少し食べておけば良かった。

そんなことを考えながらいると、急に視界に太陽が映る。

倒れたのだと分かったときには、意識が飛んでいた。

「美凰さま!美凰さま!!」

「だれか、その女に水をかけて起こしなさい。罰を受けていると自覚させるのよ」

「お願いです!このままでは死んでしまいます!」

興味がなさそうにする喩良妃に、阿蘭が泣きながら嘆願する。

「うるさいわね。耳障りだから黙らして――」

「燕王殿下、王妃さまのおなり」

喩良妃が言うよりも早く、門の方から殿下と王妃の来訪を告げる声が響く。

「で、殿下と王妃さまに拝謁いたします……」

殿下と王妃の急な来訪に困惑しながら、拝礼をする。

「海儸、この()(さま)は何だ?」

倒れている徐静妃と郭御華を侍医に診せるように命じてから、ぞくりとする低い声で尋ねると喩良妃は口ごもる。

「喩良妃、殿下がお尋ねになっているのよ。答えなさい」

「わ、私は……郭御華が扇子を、ぬ、盗んだので罰しました……」

「なぜ徐静妃をも罰した?」

「そ、それは……」

「答えろ!!」

畏縮(いしゅく)した喩良妃をみかねた王妃が、殿下、と声をかける。

「喩良妃は体調がおもわしくなさそうですわ。後ほど、詳しくお聞きになられては?」

「聞くまでもない。喩良妃は病のため、二か月の謹慎(きんしん)を命じる。しかと養生し、その邪悪な考えを改めろ」

「そ、そんな……!殿下!!私が悪うございました!お許しください!殿下!!」
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