後宮鳳凰伝 愛が行きつくその先に
秀快の袖にしがみつき、必死に許しを請う喩良妃を王妃が振り払う。

「喩良妃、殿下をこれ以上困らせないで。だれか、喩良妃を部屋まで連れて行きなさい。喩良妃は病を(わずら)わっているわ。正嘉殿から出さないように、しかと見張りなさい」

「さすがは王妃だな。いつもそなたが上手くこの王府を差配してくれて助かっている。苦労をかけるな」

「それが妻の役目ですもの。殿下のお役に立てているのであれば光栄ですわ。それより、徐静妃が心配ですわ。見舞いに行きませんか?」

「そうだな、行こう」





「徐静妃さま、お目覚めになられたのですね。お加減はいかがですか?」

目を開けると、燕王付きの侍女が心配そうにお腹を見てくる。

「あの……私のお腹がどうかしたかしら?」

「これはこれは。申し訳ございませんでした。徐静妃さま、お慶び申し上げます。侍医によると懐妊して二十日ほどとのことですわ」

「い、いま、なんと言ったの……?」

「ご懐妊ですよ。殿下の御子がお腹にいるのです」

「本当に?本当に懐妊したの?」

「ええ。殿下が大層喜ばれますわ」

突然のことに驚きが隠せないが、確かに月のものが遅れていた。

お腹に触れて嬉しさに浸っていると、窓の外から殿下と王妃が見えた。

「燕王殿下と王妃さまのおなり」

拝謁しようと寝床から起き上がると、礼はよいと制される。

「徐静妃はもう大丈夫なのか?」

「侍医によると安静が必要だと。それから、お祝い申し上げます。徐静妃さまがご懐妊でございます」

「誠か!?」

王妃がすぐさま跪き、お慶び申し上げます、と笑顔で言う。

(しょう)太監。知らなかったとはいえ、懐妊中の妃を罰するなど許されることではない。喩良妃の謹慎期間を四か月に伸ばせ」

「かしこまりました」

「殿下。郭御華を見舞いに行きますゆえ、失礼いたします」

「ああ」

興味がなさそうな口ぶりに、王妃は奥歯を噛みしめるが、やがて慈愛に満ちた笑顔で去っていった。



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