後宮鳳凰伝 愛が行きつくその先に
「美凰!」

「秀快?」

突然の訪問に驚いた美凰は目をしばたたかせた。

「いかがなさったのですか?」

「出陣だ!父皇から軍を任せられた。光栄過ぎて気持ちがすごく高ぶっているよ!」

「軍……?もしかして、元の討伐を?」

「ああ、そうだ。来月には燕に向かうつもりだ」

「来月ですか!?あまりにも早すぎませんか……?」

急な事で困惑の表情を浮かべる。

「元が残っている限り、明は非力な国として思われる。前王朝の国すら倒せない国なのか、とね。それに北方では略奪が行われ、民が苦しんでいるらしい。私は民たちを救いたいんだ。そして、この国に貢献したい。分かってくれるか……?」

「ええ、もちろんですよ。秀快は昔から国のために尽くすと言っていましたもの。立派な心構えだと思います。ですが……戦は命を奪うか奪われるかの場所です。あまり無理をなさらないでくださいね……」

「ああ、君と子供たちのために勝利を捧げるよ」





「何ですって!?」

「落ち着きくださいっ、王妃さま!」

金切り声を上げて茶杯を投げつける張王妃・靇月に侍女たちが畏縮(いしゅく)する。

普段、穏和で侍女たちにも優しい主が鬼の形相で叫んでいることに困惑しているようだ。

「……もう一度言いなさい」

誰も口を開こうとしない様子に、靇月は几案(つくえ)を叩きつける。

「言いなさいと言っているでしょ!?」

「も、申し上げます……!燕王殿下が〝勅命で元の討伐へ行く。準備は徐静妃に任せるので、他の者はしなくてよい〟とのことです……」
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