後宮鳳凰伝 愛が行きつくその先に
侍医が脈をはかりながら容態を診ていく。

「美凰さまの容態はどうなのですか……?」

険しい顔で診ていた侍医は相好(そうごう)を崩して朗らかに言った。

「お慶び申し上げます。懐妊して二月(ふたつき)ほどですよ」

「懐妊!?本当ですか!?なんて喜ばしいのかしら!!ね?阿蘭さん!!」

惢真が喜びを阿蘭と分かち合おうとするが、阿蘭の暗い顔を見て黙る。

「阿蘭さん?どうしたの?美凰さまが懐妊して嬉しくないの?」

恐る恐ると惢真に問われ、はっとして首を振る阿蘭。

「違うの!もちろん、美凰さまが子宝に恵まれたのは嬉しいことよ。でも……喩良妃や楊静妃、ほかの妃たちがよく思わないかもしれない」

「確かに……」

「美凰さまとその御子も危ないのではないのかと思ってしまうと、素直に喜べなくて……」

「そこまで考えていなかったわ……阿蘭さんは本当に美凰さま想いね。私も見習わないと!」

感嘆の声をもらした惢真は美凰の方を向いて微笑んだ。





だから、気付かなかったのだ。



――――阿蘭が後ろめたそうにしていたことに。





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