後宮鳳凰伝 愛が行きつくその先に
「どうしたら……どうしたら、殿下の心を掴めるの……?どうしたら誰にも侮られない正妻としていられるの?」

「直接、燕王に聞けば良いのでは?」

「どうして突き放すの……?まだ、あの事を(うら)んでいるの?」

皇太子は何も言わない。

「そうなのでしょ?まだ……茗玉(めいぎょく)のことを想ってい……っ」

「お前がその名を口にするな!!茗玉を殺した貴様が!!」

皇太子が靇月の首を掴み、手に力を込めた。見開かれた両眼には憎悪(ぞうお)があらわだ。

「どうして……そんなことを言うの?あなたにたくさん尽くしたわ!!たくさん捧げた!!なのに……あなたはいつだってそうよ!!塵屑(ごみくず)を見るかのように私を蔑んで!!あなただけじゃないわ!!茗玉もよ!!」

「黙れ!!それ以上言えば、弟の嫁といえども容赦しない!!」

靇月の身体を地面に叩きつけ、苛立ちを隠そうともせずに去ろうとする皇太子。

「待ちなさい!!茗玉が一体あなたに何をしてくれたっていうの?!妻もいて子供もいるのになぜ茗玉をずっと想い続けるのよ!!死者はあなたのもとへ戻って来やしないわ!!なぜ忘れられないのよ?!」

(なぜ私を見てくれないの……?!)

「たとえ茗玉が生きてたとしても、あなたと連れ添うことはできなかったわよ!!敵国の公主(こうしゅ)である茗玉があなたと結ばれる運命なんてありやしない!!あなたたちが一緒にいられる時なんて死んですら永遠にないわ!!」

「それなら、私からも言っておこう。お前と私が結ばれることも永遠に訪れない。何があったとしてもだ」

吐き捨てるように言った皇太子に、靇月は涙を流して叫んだ。

「朱標!!あなたが憎いわ!!あなたが大切にしているもの全部奪ってやるわよ!!」


靇月は天を睨みつけ、ぞくりとする声音で言った。


「茗玉、見てなさい。お前の大事な人を絶望の(ふち)に追い込んでやるわ。朱標の記憶の最後に残るのはお前ではない。この私よ」



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