推し? 好き? 最後はリアコ? ー揺れる心を抱き締めてー
……夢?

ねここくんはロックな服装で,まろんくんは灰色のパーカーを着たゆるいコーデ。

かっこ,いい……

思考全部投げ捨てて,真っ白な頭でそう思った。



「あれ? ここ……もしかして」



突然出てきた私を,真ん丸な目で見つめたねここくんが何かを言いかける。

けれど突然動いた推しに動転した私は

え,何でいるのやっぱり夢?!

こんな田舎のドンピシャで何で……

いやなんでもいい,プライベート!!!

またガチャリとドアを開けて,流れるように戻ろうとした。



「あれ,美海」



見知った声に,手を止める。

そろそろと私は顔を出した。



「……朔?」



マンション1階の端っこ,101号室。

すなわち隣の元住人。

今は人気モデルをしている,1つ年上の自慢の幼馴染みだ。

それはもう,どこからどう見ても。



「久しぶり……」

「うん,久しぶり」


「……じゃ」



挨拶をすれば返ってきて。

あぁ朔か。

そうほっと息を吐いた私はそっとドアを閉じていく。



「ちょっ,せっかく逢えたのに」



朔は苦笑いをしながら,がっしりとドアを掴んで閉まらないようにした。

心が悲鳴をあげる。
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