死神キューピッド
「ああ、なんとなく小汚い感じのじーさん?」


浮浪者っぽい、という一言はさすがに控える。


一応、客だし。


「その方からの言伝を頼まれて、ここに来ました。あの、直接、頼まれたわけではないんですけど」


「伝言? なんで俺に?」


「詳しいことは、ここでは言えません。なので、そこの公園のベンチで待ってます」


「……あのさ、俺、行かねえけど。バイト中だし。そんな奴、知らねえし」


「けど、俺も、これをあなたに伝えないと、帰れないんで」


甘く整った顔立ちのわりに、鋭く尖った瞳。


殺気立つその表情に、ひるんだわけじゃない。


ただ、気味が悪いと思いながら時間を潰すのもわずらわしいし。


休憩時間になるとすぐに公園に向かった。


公園で俺の顔を確認すると、そいつはぺこりと頭を下げた。


木陰にいるせいか、その表情ははっきりとは見えない。

けど、違和感。


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