死神キューピッド
太陽の下にいるのに、なんでこいつの周りだけ薄暗いんだ?


ひとりだけ深い闇に包まれているようなその姿に、ぞっと悪寒が走る。


あえて太陽の光をあびるように空を仰いで、その薄暗さを振り払う。


「それでは伝言を。『苦労させて悪かった。もう振込の必要はない。労災がおりる。受取人は、お前だ。母さんを大切にしてやってくれ』」


淡々と並べられた言葉に、思考だけが置いてきぼりを食らった。


「は? ……意味わかんねえし。つうか、ロウサイ?とか。俺、頭悪いから、マジで理解できないんっすけど」


言いながら、声がかすれていく。


ばくんと、心臓が立てる妙な音。


『どこかで野垂れ死にでもしたのかもな』


吐き捨てたはずの自分の言葉が、腹の底で渦を巻きはじめる。


「高田さんは事故で。俺が知らされているのはそれだけです」


「……意味、……わかんねえ」


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