死神キューピッド
痛風の店長は力仕事ができねえし、新人は使えない。


……けど、すぐには立ち去れないほど、目の前の男が荒みすぎていて気になった。


このまま放ってはおけないだろ。


カバンのなかを漁って、休憩時間に食おうと買っておいた昼飯を取り出すと、そいつの手に無理やり掴ませた。


「よくわかんねえけど、あんた、ちゃんと食ったほうがいい。それ、うちのコンビニでさっき買ったやつだから。期限切れとかじゃなくて、ちゃんと俺が金払って買ったやつだから」


仄暗い顔を向けられて、ぞくりと背筋が寒くなる。


感染しそうな薄気味の悪さを振り払い、じっとその男の顔を見据えた。


「とにかくしっかり飯食って、力をつけろよ。あんた、こんな奴じゃないだろ。もっと光の真ん中にいるような人間だろ」


澱んだ瞳、こけた頬、光を失った表情。


その姿は、荒んでいるというレベルを超えて、死神のようにさえ見えた。


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