死神キューピッド
そのとき、ドンっと鈍い音が空で鳴り、続いてぱりん、と奇妙な音が響いた。


……は? ……雷?


晴れてるのに、なんで? 


「まずい」


ハッとしたように、その男が目を大きく見開いて、立ち上がる。


一歩足を踏み出したそいつが、ゆっくりと振り返る。


「あんたさ、いつも歪んだ目で俺のこと見てたよな。けど、あんた、生きてるんでしょ。俺はあんたが、うらやましい」


歪んだ唇に紡がれた言葉だけが残されて、身動きとれずに、去っていくそいつの背中を見つめていた。


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