死神キューピッド
文化祭実行委員を決めようとホームルームが開かれて、望まない形で私の名前が候補に挙がった。


「桃井が委員やるなら、俺、実行委員やろっかな」


声を上げたのは、軽くてチャラくてお調子者の東王子くんって男子だった。


教室の隅に潜んでいた私は、唐突に名指しされて、ただ言葉を失った。


「だって、桃井だったら面倒くさいこと、全部やってくれそうじゃん」


本人を目の前にして、そこまで本音をぶちまけますか?と思ったけど、当時の私は日陰に派生してるシダみたいな存在で、反論なんてできるはずもなかった。


「無理です、嫌です、できません」と伝える間すら与えてもらえないまま、黒板に私の名前が書かれていた。


「桃井さん、東王子くんと一緒に実行委員なんていいなー」って、キャーキャーと騒ぐ女子はいたけれど、東王子くんが何もしないのは分かり切ってたから、実行委員を代わってくれるひとなんて一人もいなかった。


みんなが笑顔で、その話題に幕を引いた。


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