死神キューピッド
「俺、手汗かいてるかも」って、虹太がふにゃっと笑った。


……すごく、楽しかったな。


あれからもう５年。


こたつでみかん一緒に食べたいなって言ったのは、虹太なのに。


テレビのリモコンを手に取ると、ぽいっとなげる。


しばらく現実世界から離れていよう。


こたつのぬくもりに温められて、このまま私も溶けて消えてなくなっちゃえばいいのにな……。


虹太は、今、ほかの女の子の手とかつないじゃってるのかな。


うん、つないでるかも。


虹太の手が、ほかの女の子に触れてるなんて、考えたくもないけど。


ひとの心は移りゆくものでしょう？


今、虹太はだれと一緒にいるんだろう。


ぼんやりと、加虐的な想像をめぐらせる。


バイト先のふわっとした感じの可愛いらしい女の子？


あゆみちゃん、だっけ。


< 25 / 117 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop