死神キューピッド
はあ。


シャワーだけでも浴びないと、自分がくさい。


お風呂好きとか、どの口が言ってたんだか。


ごめんなさい、もう二度と、お風呂好きだなんていいません。


そう心のなかで懺悔したけれど、ふろ自動のスイッチひとつ、押す気になれない。


とにかく体が動かない。


……とりあえず、さっき買ったおにぎり、食べよう。


コンビニの袋に手を伸ばしたそのとき。


背後で妙に現実的な金属音が、響いた。


ガ、チャリ。


警戒するような、遠慮がちな、それでいて迷いのないその音。


振り返らなくても、わかる。


これ、……ドアノブが動いた音だ。


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