死神キューピッド
え、えっと、スマホ、どこだっけ。


警察、とにかく、警察。


動けない。


体が、動かない。


―――怖い。


じわっと全身に嫌な汗が浮かぶ。


声が、でない。


喉の奥で詰まって、悲鳴すら出てこない。


頼むから、それ以上は入って来ないで。


お願いだから。


ぎゅっと目をつぶって、大きく息をすう。


玄関から感じる、人の気配が空気を揺らす。


ダメ、入って来ないで。


絶対に、ダメ。


嫌だ。


振り返ったら、ダメだ。


そう思うのに。


息を止め、部屋に入ってきたその男を、呆然と見上げた。


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