死神キューピッド
それでも虹太に触れたくて、羞恥心と熱情の狭間で右往左往していると、虹太がなんとも言えない笑顔を見せる。


「なに?」


「いや、分かってはいたんだけどさ、柚って、ホント俺のこと大好きだよな」


「は?」  


……今更、それ?


「神経質すぎるほどのキレイ好きなのに、ここまで散らかし放題にしてさ。こんなにひどくて愛おしい部屋、見たことない」


《それなら、置いていかないで》


《ひとりにしないで》


《どうして、いきなりいなくなったの?》


喉元まで、出かかった言葉たち。


でもそれは、口にしなかった。


知らなくていいことは、きっとある。


そういうのを知って、傷つくのは私だから。


もうこれ以上の痛みは受け止められない。


< 40 / 117 >

この作品をシェア

pagetop