死神キューピッド
私はそんなに強くない。


今、この瞬間に、虹太がここにいてくれれば、ホントにそれだけでいいの。


つぎの瞬間、虹太の瞳が近づいて、虹太の熱を帯びた体温にくるまれた。


存在を確かめるように、強く抱きしめられて。


その懐かしい香りにぶわっと涙が浮かんで、ハッとする。


そうだ、私、くさい!


「や、やっぱり、ちょっと待って!」


両手で虹太を押しのけた。


「お風呂! シャワー! 3分で浴びてくるから、お願いだからちょっと待って!」


「別にいいのに」


「私がよくないのっ!」


狭い浴室に駆け込んで、何日身に着けているのかわからない部屋着と下着を洗濯機に放り込むと、頭からシャワーを浴びた。



まだ、冷たいけど!


お湯、全然でてこないけど!


だって、虹太が帰ってくるなんて思わなかった。


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