死神キューピッド
そこには虹太が立っていて、ゆったりと笑って両手を広げる虹太に、そっと抱き着いた。


「おかえり、虹太」


「……ごめんな」


「ホントだよ」


でも、もう、いいよ。


虹太がいてくれたら、ホント、私はそれだけでいいの。


「あのさ……こんなときに言うことじゃないけど」


「うん」


「俺、柚のこと、大好きだよ」


かすれる虹太の声に、ぐっと目の奥が熱くなるけど。


こんなタイミングで泣きたくない。


せめてもう少し、強がらせて。


「……知ってるし、私の方が好きだし」


「カワイイ奴め」


重なり合った唇に夢中になっているうちに、身に着けたばかりのスウェットはあっという間にはぎとられた。  


そのままその場に唇で押し倒されて、全身にのしかかる虹太の熱を受け止める。  


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