死神キューピッド
ふわりと香る虹太の香りもしめった体温も、肌に慣れた重さも。


すべてを必死に受け止める。


だって、これは虹太だから。


ぽろぽろとこぼれる涙はそのままに、いつもより少し強引で余裕のない甘すぎるほどの虹太と無我夢中で抱き合った。


全身を這う手のひらも、唇から零れる熱い吐息も、深く感じさせる指先も舌も。


二度と分かち合えないと思っていた熱量で、何度も何度も虹太とお互いを確かめ合った。


私のなかで何度果てても飽くことなく虹太に貪られ、心地のいい疲労を超えて、気絶さながら。


それでも足りなくて、お互いピクリとも動けなくなるまで、 その存在を確かめ合った。


……虹太?


深くて甘い眠りのなか、うっすらと意識が戻り、跳ねるように起き上がる。


隣に眠る虹太を確認して、ホッと深い息をはく。


……良かった、夢じゃない。


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